私は、この3年程、「大中恩生誕100年記念プロジェクト」で全国の多くの合唱人と関わりを密にしてきた。その中で、昨年7月に聴いた金沢カペラ合唱団の「島よ」をはじめとする大中恩作品は秀逸。演奏に痺れた。指揮の山瀬泰吾先生と団員の「歌」にかける熱い思い…。今年1月19日福井での演奏会で是非その歌声を披露していただきたいと強く願い、山瀬先生はじめカペラの皆さんのご協力でそれは実現した。当日の「島よ」は素晴らしい響きと感動に満ち溢れた。
「島よ」について山瀬先生は、最後の「私ではないのか」に集約されると語る。
能登半島地震から1年余り。故郷の能登半島・見附島に重ねて募る思い。今、カペラにしか歌えない「島よ」がここにある。
巷ではよく「被災地・被災者に寄り添おう」と言われる。が、具体的にどう行動したらよいのか…。残念ながら被災地から離れた多くの人々は、日々の生活に埋もれる。
今回の福井での演奏会のテーマの一つに「つなぐ」がある。カペラの歌う「島よ」は、その言葉・詩の世界・旋律・ハーモニー・ピアノ等によって、演奏する者と聴く者の心を見事につないだ。カペラの「島よ」によって人々の心は「被災地・被災者への寄り添い」へと動くことになったと思う。私自身にとっても、素晴らしい大きな体験となった。
今回、福井には、大中恩先生主宰「コールメグ」元団員の先輩たちが演奏会を応援しようとツアーを組んで来てくれた。有難いことだ。ならば、カペラの皆さんと共に「島よ」を歌ってもらおう…。これも「つなぐ」の一つ。当日、本番直前のみの「合わせ」だったが、山瀬先生の指揮のもと、心と歌声は一つとなった。「島よ」という大中恩作品によって、人、地域、時代、心が見事につながった。それは「被災地の未来」へつながる歌声でもあった。大中恩先生は、金沢カペラ合唱団の素晴らしい「島よ」の演奏を満面の笑みで喜んでくれていると思う。
山瀬泰吾先生、金沢カペラ合唱団の皆さんに心より感謝を申し上げる。ありがとうございました!
大中恩生誕100年記念プロジェクト 副実行委員長 前川佳之

Comments