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《寄稿》「第20回 新しい風コンサート」参加に寄せて

  • kanazawacapella
  • 6月19日
  • 読了時間: 3分

更新日:6月30日


 

🟦6/28私が金沢で歌う理由 その②  ~44年前の出逢いに感謝の気持ちを込めて~ 🟦


ここに、一冊の楽譜がある。「金沢二水高等学校合唱部の歌『青春のキャンパス』(関根栄一・詩/湯山昭・曲)」。今からちょうど半世紀前、昭和51年(1976年)金沢二水高校が久々の全国コンクール出場で銅賞を獲得したことを祝し、贈られた曲という。「二水の上に覆い被さった暗く重い雲を吹き飛ばした」と顧問の山瀬泰吾先生は喜びを記されている。


この楽譜を山瀬先生から頂戴したのは、今から44年前のこと…。


当時、高校生の私が大好きだったNHKの音楽番組「音楽の広場」。作曲家・芥川也寸志さんと女優・黒柳徹子さんの軽妙な司会による人気番組だ。その金沢での公開収録でお披露目されたのが混声合唱曲「海濱獨唱」(室生犀星・詩/芥川也寸志・曲)。放送後、この演奏をもう一度視聴したくなり、夏休み、初演の金沢二水高校合唱部へ失礼を顧みずアポ無しで訪ねた。

コンクール前の厳しい練習の最中、迎えてくださったのが山瀬泰吾先生。音楽室一杯に、すり鉢状に整列した100人を超える部員。大迫力かつ繊細な演奏。コンクール参加曲「わたしの願い」と併せて、「青春のキャンパス」も歌ってくださった。大感激!この時いただいたのが冒頭の楽譜である。

練習後の限られた時間、山瀬先生は番組同録ビデオで「海濱獨唱」を再生。数々のエピソードも聞かせてくださった。「他団が出演を断ったからこちらに演奏依頼がきた」「この番組で金大オケは格段に上手くなった」「『海濱独唱』は奇麗な曲だけど、敗北者の歌だからなぁ」…。「敗北者の歌」という言葉。犀星の詩を愛吟する高校生の感傷的な心に妙に響いた。

今、「青春のキャンパス」の楽譜を手にしながら、44年前、突然の訪問にもかかわらず高校生の私の我儘に対応してくださった山瀬先生のことを熱く思い返す。改めて深謝。(なお、金沢二水高校は、この年、「わたしの願い」で全国大会に出場を果たす)


 それから二十年ほど経ったある日、山瀬先生と再会することに…。石川県立音楽堂で混声合唱曲「島よ」を演奏するにあたり、山瀬先生が作曲者・大中恩先生を指揮者として招聘。私は、大中先生から突然連絡を受けて、金沢へと飛んで行った。大中恩主宰の合唱団「コールメグ」の団員だった私は、先生と終生懇意にさせていただいた。当日、大中先生の強い勧めで、図々しくもリハーサルで「島よ」を一緒に歌わせていただいた。ステージ上の大中先生が、客席の山瀬先生に「ちゃんと歌と言葉が届いているかナ?」と問いかけると、山瀬先生は驚くほどのスピードで客席を跳ね回り「いいと思います」とのニュアンスでOKサインを返されていた。とにかく、この日、山瀬先生と大中先生の若さには驚いた。そして、金沢の地で、山瀬先生と大中先生と私がつながる喜び。音楽を通しての「人の縁」の不思議さと有り難さを実感した。


たぶん、山瀬先生は、この二つの出来事をご記憶ではないだろう。

数えきれない程多くの生徒さん、音楽家の皆さんとの日々の向き合いの中、山瀬先生は、きっと、相手の人生を音楽で喜び溢れるものに彩ってきたに違いない。そして、私も、喜びを分け与えていただいた一人だと自負している。


そんなご縁を振り返りながら、今回、金沢で歌うことを決意した。44年前、私を温かく迎えてくださった山瀬先生の指揮で歌いたい!これが、6/28金沢のステージに立つ理由、その➁である。(さらに③に続く)


前川 佳之 様



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